調整内容レポート その11(PTS MAGPUL MASADA AKM:中編)
Gunsmithバトン基本調整内容レポート、PTS MAGPUL MASADA AKMの中編をお届けいたします。(前編はこちら)
こちらは前編で開いたメカボックス内部のギヤまわりです。各所に目立った汚れも無く、グリスの質、量ともまずまず適切で、見た目の印象は悪くありませんね。
画像中央のマイクロスイッチと、その左側に寄り添うように取り付けられている黒いパーツがご覧いただけるでしょうか。このMASADA AKMは、トリガーが直接マイクロスイッチを押す方式ではなく、前述の黒いパーツの中に設けられたシーソー様のパーツを介して、マイクロスイッチのON、OFFを行う形を採用しているのです。今回お預かりした際の、「バッテリーを繋いでトリガーを引いても動かない」というトラブルの原因は、この機構を司るパーツの、微妙な位置関係の誤差によって生じていたものでした。このトラブルは弊社でも初めて遭遇したケースだったため、今回採った対処方法で再発することはないか、また、他のトラブルを招くことは無いか等、様々な角度から考慮した上で、トラブルを解消いたしました。
見た目の印象は悪くないメカボックス内部でしたが、当然ながらすべての主要パーツを取り外し、調整を施します。画像は、パーツを取り外したメカボックス内側の状態です。
これらは、強力パーツクリーナーでの洗浄と、歯の欠けやゆがみのチェックが完了したギヤ類です。上からセクターギヤ、スパーギヤ、ベベルギヤですね。どれもしっかりした造りで、使用にあたっての問題は無さそうです。
こちらはギヤ類と同様に洗浄、チェックした逆転防止ラッチです。やはり問題は見受けられないため、そのまま使用して行きます。
上でご覧いただいたメカボックス内部を、徹底的に洗浄した状態がこちらです。軸受けはいわゆるメタル軸受けですが、ベベルギヤに対応するもののみベアリング軸受けになっていました。取り付けが甘いものがあったので、一旦すべて取り外して圧入し直し、接着固定しています。
洗浄が完了したところで、シム調整に着手します。まずはモーターホルダーを固定した状態での、ピニオンギヤとベベルギヤの噛合具合を確認。ベベルギヤの下に入れるシムの種類を見極めます。
こちらが、ベベルギヤの下側にシムを入れた状態です。通常見慣れたシムよりも径が小さいことがおわかりいただけると思うのですが、これはベアリング軸受けに対するシム調整においては、非常に重要なポイントなのです。
ここで使用したシムは弊社にて取扱中の、MODIFY-TECH アドバンスドシムセット[ミニタイプ:0.1mm×10,0.15mm×10]の中の1枚です。何故、ベアリング軸受けに対して、この小径シムを使う必要があるのかは以下の通り。
簡略化した図の意味がおわかりいただけるでしょうか。緑と赤で描いた部分がベアリング軸受けの断面なのですが、軸に接しているベアリングの内輪に、青いシムが乗っていますね。これが、ベアリング軸受けに対して小径シムを使った、理想的なセッティングです。
こちらは径の大きいシムを使った際の概念図ですが、ベアリングの外輪までシムが乗ってしまっている状態です。これではベアリングのスムーズな回転を、シムが妨げる結果になってしまいますよね。これが今回、小径シムを使用した理由なのです。
ベベルギヤのシム調整が決まったところで、筆を使って丁寧にグリスを塗布します。
ギヤを組み付ける前に、メカボックス側のベアリング軸受けにもグリスを充填しておきました。
メカボックスを閉じた際にグリスが行き渡るように、シムとギヤの間にも少量を塗布します。
高さの決まったベベルギヤとスパーギヤの噛合を確認し、必要なシムを入れた後、セクターギヤも同様に確認してシムを入れました。ベベルギヤに塗布したグリスが周囲に広がっているのは、メカボックスを閉じ、モーターホルダーを取り付けて実際に回した後の状態です。もちろん、スパーギヤとセクターギヤを組んだ後も、実際に回してギヤノイズ等を確認しています。組んでは回し、回しては開けと微調整を繰り返した末、シム調整は完了しました。
ちなみに、各チューナーは画像のような簡易装置を自作し、モーターに繋いで、シム調整の際のギヤノイズを確認しています。作業効率を上げるための、ちょっとした工夫ですね。
こちらは、モーターホルダーに収まったMASADA AKMのモーターです。モーターホルダーはしっかり作られているのですが、上述のチェックでモーターを回したところ、モーターホルダーに対してモーターが若干小さく、ホルダーの中で暴れてしまうことがわかりました。
これを防止するため、モーターホルダーの内側にアルミテープの細切りを貼ってやります。何枚か貼ってはモーターを組み込んで、クリアランスを確認するといった現物合わせで、わずかに動く程度のところまでアルミテープを貼り重ねました。完全に固定してしまうと、グリップ底部ネジでのモーターの位置調整が出来なくなりますからね。
シリンダーは、ニッケルメッキ仕上げのフルシリンダーが採用されていました。一般的な電動ガンに比べて、シリンダーヘッドから突き出したエアーノズルが、長めに作られていますね。
こちらの画像は、ロアレシーバーにメカボックスを組み付けた状態なのですが、給弾ノズルと給弾ルートの位置関係にご注目ください。マガジンハウジング下から差し入れているピンポンチは、マガジンから上がって来たBB弾が入り込む穴の位置を指しています。この位置から給弾ルートに入ったBB弾は、一旦前方に向かってカーブする形で、チャンバーに導かれるのですね。これは、MASADA(5.56mm仕様)と共通のメカボックスに対し、AKM用マガジンの給弾口の位置が異なっているため、こうした構造を採っているのです。
当然、エアーノズルに合わせて、給弾ノズルも長く作られています。ノズル先端のエアー吐出口は、BB弾の吸い付きを防止する形状に作られていますね。
といったところで、中編はここまでです。随分長くなってしまって申し訳ございませんでした(汗) 次回後編では、ピストンまわりからバレル、チェンバーパッキンの調整と、組み立て、完成までを一気にご紹介いたしますので、何卒お付き合いのほどをよろしくお願いいたします。
こちらは前編で開いたメカボックス内部のギヤまわりです。各所に目立った汚れも無く、グリスの質、量ともまずまず適切で、見た目の印象は悪くありませんね。
画像中央のマイクロスイッチと、その左側に寄り添うように取り付けられている黒いパーツがご覧いただけるでしょうか。このMASADA AKMは、トリガーが直接マイクロスイッチを押す方式ではなく、前述の黒いパーツの中に設けられたシーソー様のパーツを介して、マイクロスイッチのON、OFFを行う形を採用しているのです。今回お預かりした際の、「バッテリーを繋いでトリガーを引いても動かない」というトラブルの原因は、この機構を司るパーツの、微妙な位置関係の誤差によって生じていたものでした。このトラブルは弊社でも初めて遭遇したケースだったため、今回採った対処方法で再発することはないか、また、他のトラブルを招くことは無いか等、様々な角度から考慮した上で、トラブルを解消いたしました。
見た目の印象は悪くないメカボックス内部でしたが、当然ながらすべての主要パーツを取り外し、調整を施します。画像は、パーツを取り外したメカボックス内側の状態です。
これらは、強力パーツクリーナーでの洗浄と、歯の欠けやゆがみのチェックが完了したギヤ類です。上からセクターギヤ、スパーギヤ、ベベルギヤですね。どれもしっかりした造りで、使用にあたっての問題は無さそうです。
こちらはギヤ類と同様に洗浄、チェックした逆転防止ラッチです。やはり問題は見受けられないため、そのまま使用して行きます。
上でご覧いただいたメカボックス内部を、徹底的に洗浄した状態がこちらです。軸受けはいわゆるメタル軸受けですが、ベベルギヤに対応するもののみベアリング軸受けになっていました。取り付けが甘いものがあったので、一旦すべて取り外して圧入し直し、接着固定しています。
洗浄が完了したところで、シム調整に着手します。まずはモーターホルダーを固定した状態での、ピニオンギヤとベベルギヤの噛合具合を確認。ベベルギヤの下に入れるシムの種類を見極めます。
こちらが、ベベルギヤの下側にシムを入れた状態です。通常見慣れたシムよりも径が小さいことがおわかりいただけると思うのですが、これはベアリング軸受けに対するシム調整においては、非常に重要なポイントなのです。
ここで使用したシムは弊社にて取扱中の、MODIFY-TECH アドバンスドシムセット[ミニタイプ:0.1mm×10,0.15mm×10]の中の1枚です。何故、ベアリング軸受けに対して、この小径シムを使う必要があるのかは以下の通り。
簡略化した図の意味がおわかりいただけるでしょうか。緑と赤で描いた部分がベアリング軸受けの断面なのですが、軸に接しているベアリングの内輪に、青いシムが乗っていますね。これが、ベアリング軸受けに対して小径シムを使った、理想的なセッティングです。
こちらは径の大きいシムを使った際の概念図ですが、ベアリングの外輪までシムが乗ってしまっている状態です。これではベアリングのスムーズな回転を、シムが妨げる結果になってしまいますよね。これが今回、小径シムを使用した理由なのです。
ベベルギヤのシム調整が決まったところで、筆を使って丁寧にグリスを塗布します。
ギヤを組み付ける前に、メカボックス側のベアリング軸受けにもグリスを充填しておきました。
メカボックスを閉じた際にグリスが行き渡るように、シムとギヤの間にも少量を塗布します。
高さの決まったベベルギヤとスパーギヤの噛合を確認し、必要なシムを入れた後、セクターギヤも同様に確認してシムを入れました。ベベルギヤに塗布したグリスが周囲に広がっているのは、メカボックスを閉じ、モーターホルダーを取り付けて実際に回した後の状態です。もちろん、スパーギヤとセクターギヤを組んだ後も、実際に回してギヤノイズ等を確認しています。組んでは回し、回しては開けと微調整を繰り返した末、シム調整は完了しました。
ちなみに、各チューナーは画像のような簡易装置を自作し、モーターに繋いで、シム調整の際のギヤノイズを確認しています。作業効率を上げるための、ちょっとした工夫ですね。
こちらは、モーターホルダーに収まったMASADA AKMのモーターです。モーターホルダーはしっかり作られているのですが、上述のチェックでモーターを回したところ、モーターホルダーに対してモーターが若干小さく、ホルダーの中で暴れてしまうことがわかりました。
これを防止するため、モーターホルダーの内側にアルミテープの細切りを貼ってやります。何枚か貼ってはモーターを組み込んで、クリアランスを確認するといった現物合わせで、わずかに動く程度のところまでアルミテープを貼り重ねました。完全に固定してしまうと、グリップ底部ネジでのモーターの位置調整が出来なくなりますからね。
シリンダーは、ニッケルメッキ仕上げのフルシリンダーが採用されていました。一般的な電動ガンに比べて、シリンダーヘッドから突き出したエアーノズルが、長めに作られていますね。
こちらの画像は、ロアレシーバーにメカボックスを組み付けた状態なのですが、給弾ノズルと給弾ルートの位置関係にご注目ください。マガジンハウジング下から差し入れているピンポンチは、マガジンから上がって来たBB弾が入り込む穴の位置を指しています。この位置から給弾ルートに入ったBB弾は、一旦前方に向かってカーブする形で、チャンバーに導かれるのですね。これは、MASADA(5.56mm仕様)と共通のメカボックスに対し、AKM用マガジンの給弾口の位置が異なっているため、こうした構造を採っているのです。
当然、エアーノズルに合わせて、給弾ノズルも長く作られています。ノズル先端のエアー吐出口は、BB弾の吸い付きを防止する形状に作られていますね。
といったところで、中編はここまでです。随分長くなってしまって申し訳ございませんでした(汗) 次回後編では、ピストンまわりからバレル、チェンバーパッキンの調整と、組み立て、完成までを一気にご紹介いたしますので、何卒お付き合いのほどをよろしくお願いいたします。