ETAP-7 その4
雨はますます激しくなり、さらに近くに雷が落ち始めました…
※写真はイメージです。この夜間走行は写真を撮る気にもなりませんでした…
まわりはなにもない丘陵地帯。雷があまりに激しく危ないので、送電線の鉄塔の下で止まって雷が収まるのを待ちました。このあとこの送電線に沿って進むはずです。
雨宿りするようなところはないので、バイクに跨ったまま雨に叩かれながら、10分、20分ぐらい止まっていたでしょうか。少しは雷が少なくなったので、コイケさんと二人で走り出しました。
走りだした直後、自分は転倒しました。
雨に濡れたピストはものすごく滑りやすく、路面を確認しようとスタンディングした瞬間、リヤの荷重が抜けてツルンと一瞬で転びました。前を走るコイケさんは自分の転倒に気づいていません。転んでグローブは泥だらけだし足元も滑るので、なかなか起こせず、ついにコイケさんのテールランプも見えなくなり、まったくの暗闇となりました。
途方に暮れました。路面も見えない、ケガをしていてバイクを起こすこともままならない、雨はますます激しくなる。まわりに明かりはまったくない誰もいない荒野。体はどんどん濡れていきます。雨宿りするところもなにもありません。万が一、ルートを間違えたらどこに行くのかも分かりません。一晩中、雨の中をさまよう事態になりかねません…
しかし、数分後、前方に一台のヘッドライトが見えました。コイケさんが心配して戻ってきてくれたんです! もう、神様かと思った

このあと、自分はさらに数回転びました。でも、今度は置いてけぼりにならないように、転んだ瞬間に「うわ~~~!」って力の限り大声を上げることにしました。もう恥も外聞もありません。自分が生き残るためにはなんでもありです。幸いにして、その大声でコイケさんは気づいてくれて、いつも転ぶたびに待っていてくれました。
スタンディングするとリヤの荷重が抜けて危ないことが分かったので(腰を引いて立つような芸当は、このときの自分の足では出来ませんでした)ひたすら後ろにシッティング。でも、座っていると路面がまったく見えないので、前を走るコイケさんのテールランプだけが頼りです。
路面はまったく分かりません、なにも見えません。コイケさんの2~3m後ろにピッタリと付いて、真っ暗闇の中で1点だけ光るコイケさんのテールランプの挙動で路面の状況を判断して走ったんです。コイケさんのテールランプの動きを見て、「ギャップがあるな! ここは滑るんだな! これは……穴かぁ!!!!!!」と身構えて対応して走り続けました。
雨と雷がだいぶ収まってきたかと思ったら、今度は霧が出始めてまさに五里霧中。送電線沿いに進むわけですが、鉄塔から数m離れるともう見えないほどの視界しかなくなりました。何度も止まってルートを確認するコイケさん。自分のマシンと体ではもう付いて行く事しか出来ないので、コイケさんが悩んでいるときは、頭をフルに回転させて助言し相談し合いながら進みました。
本当にこのルートで合っているのか? 全然、見当違いのところを進んでいるんじゃないのか? もうGPSポイントもなかったので、自分たちがどこに向かっているのか確証がないまま、それでもゴールを目指して二人で走り続けたのです。
そうして、永遠に続くかと思えた暗闇ですが、ついに遥か彼方に街の明かりが見えたのです!
助かった、心底助かった、これで生き延びることが出来た。あの明かりがゴールであろうとなかろうと、街があるなら人がいるから、あの明かりにたどり着きさえすれば遭難することはないわけです。そして、自分たちはちゃんとオンルートを走っていて、無事、ゴールに辿り着きました。
ゴールは22:00頃で、日が落ちてから2時間ぐらいのことでしかなかったんです。でも、その2時間は永遠に続くかと思えるほど辛くて怖い道程でした。
ゴールから10kmほど舗装路のリエゾンを走って、ビバークに到着しました。
ノビさんが待っていてくれて、「良かったぁ!」って。自分も、生きて帰れてホントに良かったと思います。
そして、ノビさんがレストランから持ってきてくれた温かい紅茶で人心地

…実はこの紅茶、ノビさんが砂糖と間違えて塩を入れてしまったので、なんとも微妙な味だったんですが、とにかく体が温まったので、それについてはなにも言わず、ありがたく飲み干しましたw
生きているって素晴らしい!
この記事へのコメント
ストーリーも実に面白いし本当に本作ったら売れるかもですね。
あざーっす! 自分の本を出すのはいつかの夢なので、加筆訂正して売り込もうかしら…
持ち込むのは造形社かなw